美しい紅葉は少しずつ散ってしまい、刻々と寒い季節がやってきたと肌で感じる今日この頃、女はコートを身に纏った。

3年前に通販で購入したダッフルコート。
何度も何度も毛玉をちぎっては投げ、ちぎっては投げと丹念に手入れしてきたよくわからないメーカーのコートだ。
鏡の前でコートをはおり、「よし！これで防寒OK♪」とご機嫌な女の顔はスカッとするほどブスであった。
そう、そのブスこそお察しの通り私のことである。

それより皆さん、「ワキアセ」って知ってる？
脇汗。WAKIASE！ワキ汗よ！分かるでしょ。

ほら太ってる人って汗すごいでしょ？
私は太ってもいないのに汗が凄い。
じっとしてれば変化はないわよ！緊張したときに出るワキ汗がただ事じゃないの。

これはそんなブスの処世術を持つ私に振りかかった、会社でのちょっとした出来事。


先日のこと。
会社でミーティングがあったわけ。
ミーティングっつっても私が会議に参加するわけじゃないのよ。
会議室って予約制になってて、会議を行うときは私が電気やらプロジェクターやら設定して、お茶とか用意しといてあげるわけ。あげるわけって言うかそれが仕事なんだけどね。
言わば私は会議室の門番。会議室の安全は私が必ず守りますガルル！！ってくらいこの与えられた使命に全力を注いでいるの。
というのも、私はこの役目をくれた会社に心から感謝しているの。
会議の予約が入れば用意して、片付けて、会議中は皆の真剣な熱い討論が聴ける。
私はプロジェクターの伝道師のようにテキパキと設定をこなす。
プロジェクターの設置の速さ選手権があったら確実にインターハイ狙えるね。
そんで用がない時は隅っこでシュッとしてる。
ちなみにこの間一言も喋らなくても事は進めれる。

私ったら、確実に誰かの役に立ってらぁ・・・余計なことは喋らず仕事を淡々とこなす自分・・・なんてカッコイイのかしら。
そうやって自己陶酔できる瞬間は、本当に自分がとんでもないブスで付け加えレズとかそういうややこしい問題から完全に逃れているわけ。

まぁたまに、社外の人が来た時に真剣にプロジェクターをいじっている私の顔を五度見するウンコマン☆もいるけどね。
五回も見返すなんて真剣な私ってどんだけブスなのかしら！って一瞬気が散るけどそんなの気にしない気にしない。

で話はもどるけど、先日もいつものようにミーティングがあったわけ。
私は着々と確実に仕事をこなし、いつでも会議開始ゴングがなっても良い状態にしといたわけよ。
でもそれが大した会議じゃなくてね、２時間も予約をとってたくせに1時間で完全にネタ切れ。「誰か意見やアイディアある人はいませんかー？」ってアンタこの中にお医者さんはいませんかー？じゃないんだから。 会議終わったんなら終了して別の仕事に戻ればいいものを基本仕事サボりたい男と女どもはなかなか動き出そうとしない。

こういうダラダラした会議は結構あることなので私も隅っこでいつもと変わらずシュッとしてたわけ。
そしたら、そしたらよ！
何か良いアイディアでも思いついたかのように、営業部のB子が目を見開いて遠くでシュッとしている私に向かって

「ブス(仮名)さん！ブスさんは何かアイディアありませんかー？」

って大声で聞いてきたのよ！！！

隅っこでいつものようにシュッとしながら「私って会議室の門番。物言わぬ門番。かっこいいね、私。」なんて妄想に耽っていた所にいきなり名指しとかもう完全スパーク状態。これが噂のブスパニック！
「え？え？っ」とか言いながら細い目が小刻みに震えて完全挙動不審。全米震撼！
最悪なことにそれと同時にワキから汗がぶわっと溢れ出る。

あっという間にワキから溢れた愛汁はババシャツ、ブラウスをくぐり抜け、薄手のセーターまで浸透してきた模様。
このままじゃ、満月になっちゃう。満月みたいなおおきな、まあるいまあるい汗シミができてしまう！おかあちゃーん！

危機感を覚えた私は「ごめんなさい！！ちょちょちょちょっと！！ボーッと！！しておりました！！」なんて間抜けな返事をしてしまったのです。

その瞬間マンネリしていた会議室に笑い声が・・・ちくしょう。皆して嘲笑いやがってちくしょう。なんて思わない。私はブスを極めているからね。
みんなが笑ってくれてホットして私も笑顔。ブスマイル。
こうやって挙動不審な行動も一生懸命にやってりゃ可愛がられるもんなのよ。
私ってブスを利用した小悪魔だわ。

え？小悪魔は言いすぎだろブスって？
ノンノンノン・・・！分かってないわね。これは愛されるブスの特徴なのよ。恥ずかしがり屋だけどお茶目なブス。挙動不審だけど優しそうなブス。
ブスの中で一番やっかいなのは、外見で一歩も二歩も人より遅れをとっている分、「頭脳」で勝負しようとするブスなのよ。
あなたの周りにもいない？妙に理屈っぽいブス。妙に自尊心の高いブス。
あれはとんでもないブスフェイスの私からしても見れたもんじゃない。
そういうブスってのは、「何か意見は？」なんて聞かれたら待ってましたとばかりにしゃしゃり出るのよ。
頭脳ブスに限ってどれほど自分の頭が良いのかを伝えたがる傾向にあるの。
マンネリした会議にちょっとイジられてるだけなんだからしゃしゃり出るんじゃないよ恥ずかしい。

私みたいにオドオドして笑いを取るまでいかなくとも、やっぱりブスなりの可愛げのある反応は周りをちょっとだけ和ますことが出来ると思うのよ。

そんなこんなで笑いも起きて安堵してたら不思議とワキ汗満月も新月に変わり、ヒュルリと汗も引いてババシャツ留まりくらいに落ち着いたわけ。

こういう言わば「ブスイジり」みたいな出来事は長年ブスやってるとたまに訪れてくるんだけど、上手く転換してみんなに幸せを届けてやったくらいに思ってる。
頭脳ブスも少しくらい可愛げがないと、これから先辛いわよ！誰も攻撃してきやしないんだからちょっと肩の力を抜きなさい！

そんなことよりね、質問してきやがったB子。
こいつだけはゆるせねえ。
見ると「ニヤリ」って言葉がこんなにもしっくりくる事はないぐらい「ニヤリ」としてたからね。お前は笑うな。笑うなら私みたいにもっと歯茎でろ！

B子については後日書くけど、あなたの周りにもきっといるはず「中途半端な美人」。

ブスの反対は美人じゃない。
「本物のブス」の反対は「中途半端な美人」なの。
これは絶対に普通の人は気付かない。モノホンのブスになって実際に生活してみないと絶対に気づかれないこと。それを私がこっそり教えてあげましょう。

ということで次回は「中途半端な美人の悪意」について書かせてもらおうと思います。

最後に。ガチレズの編集部が早く更新しろってうるさいのよ。ブスだからってなめてんじゃないわよ。ブスの前にリア充なんだからね全く。（仕事だけ）