第三章「ブスだけでは終わらない、終われない」
- ガチレズ!
「わさ子さん、そろそろ原稿の方を・・・」
「わさ子さん、期限が相当過ぎているんですが・・・」
「わさ子さん、お元気でしょうか。心配しています。原稿の方を・・・」
「わさ子さん、生きてますか」
私は下世話なこのサイトにブスを全面に押し出した記事を提出した。
それが伝説の第一回「吾輩はブスである」である。
そう、昨年のくそ寒い時期のことだったわ。
私はその辺のブスよりも自信があるブスだった。
これから生涯孤独に生きるかもしれないという現実への準備と心構えを着々としている優等ブス。
友達はあんまりいないし、レズだし、彼女ちゃんだって出来ないけど、ちゃんと自分の人生に責任を持って生きようとしている。そう、自信に満ちたリア充ブス。そう確たる自信を持ってたの。
私が提出したブス記事は編集部のブスに大絶賛され、瞬く間に専用コーナーまで作って頂いた。
しかし、最後の記事を執筆して2ヶ月後、私は奈落の底に落とされたのだ。
まぁブスが奈落の底に勝手に落ちただけなんだけどさ。
前置き長いわよねごめん。
私ね、すんごいブスなの。そんなことないよとか本当うるさい!こちとら自信持ってっから!
問題はそこじゃないの、私ねブスでいながらね、
ごんデブになっちゃったの。
これまではね、顔はそりゃブスもびっくりするぐらいの立派なエラ張りブスよ。
人類初のエラ呼吸に挑戦したくなるほど。おやおやこのエラは開閉式ですかなってバカ野郎!
これまでは、そんなブスな自分と向き合いちゃんと自信を持って大地に両足をでーーんと踏みしめて生きてきたわけ。謙虚にね。
だけどね、ちょっと言うのも恥ずかしいんだけど私体に自信があったの。はいそこ笑わない。
けっこうスリムだと思ってたのよ。スリムまではいかないな、微ぽちゃくらいね。
まー後ろ姿とか結構イケるだろうって。
でもね、憎らしき今年の正月にわさ子は一変した。
何か餅やらピザやらすげー美味くてさー。一年で正月くらいしか楽しみがないから、食った食った。お母ちゃんと一緒にテレビ見ながらさ、「わさ子生命保険そろそろ入ったら~」とかイラっとすること言われながらも楽しく過ごしたわけ。
お母ちゃんとの楽しい正月も終わり、デキるブスOLわさ子として2013年も頑張るかな!ってな感じで去年着てた服を着ようとしたらさ、入らないんだなこれが。
ウエストが第三次性徴期迎えてた。
ここで普通なら愕然として、「太りすぎた自分」を戒めて痩せなきゃ!って我に返るでしょ。
違うんだなこれが。
優等生ブスの私は何かとポジティブなのよ。
正月に自堕落な生活をしてしまいおそらく5キロから8キロは太ったであろう自分の姿を目の当たりにして私何て思ったと思う?
「まだバレないでしょ」
ポジティブって奴は時に牙を剥く。
この時の私にはこの言葉の意味が予想もつかなかった。
要は頭ではすげー太ったことわかってたのよね。
でも見ないようにしてたのよ。誰にか知らんがバレないだろうって思ったくらいなんだから。
私の会社は服装が自由だからさ、ちょっと楽なスラックスにフワッとしたシャツを着て初勤務を終えたわけ。
問題はここからなんだけど、正月に癖のついた食欲はそんな私を止めることなく襲ってきた。
だから、正月並に昼も夜も食ってたわけ。松屋の牛丼が美味くて美味くて・・・毎晩牛丼。勿論大盛り。
(牛丼屋って松屋が一番美味いよね?)
いよいよ歯止めが効かなくなったな~と思ったのがスラックスすらきつくなって来た2月。
それでも私は無表情でその事実をちゃんと見ようとしなかった。
その証拠に私がしたのはオシャレ御用達のゾゾタウンで買った「マキシワンピ」
デブがこれに手を出したらお仕舞い。
マキシワンピすんげー楽。ぜーーーんぶ覆ってくれんの。ついでに俺の顔も覆ってくれ。
マキシワンピを手に入れてからの私はまた調子こいてしまった。
会社のカメレオンみたいな後輩にマキシワンピ可愛い~わさ子さん珍しいですね~なんて言われて甘やかされてた。
カメレオンのが可愛いわ///なんて思いつつも喜んでた。
インドのサリーっていう衣装も欲しくなるくらい自分を覆い尽くすことの気楽さを手に入れた気でいたのよね。
そんな私の生活はある日を境に一変した。
休日にレズのブス友(私の戦友である)と飲みに行くことになった。
こいつは私の心の支えであり、こいつとならセッ○スはしたくないけど生涯支えあってゆける(金銭的に)と思える数少ない私の友達である。名前は数字の4に似てるからヨンちゃん。
ヨンちゃんとは半年ぶりの再会だったこともあり、積もる話を酒も入りながら楽しく話してたわけ。
私はもちろんこの日もマキシワンピ。この時点で私のマキシワンピは5着揃えてたから。
毎日ローテーションでマキシワンピとかどこの巨大エリンギだよ。
ヨンちゃんは、顔はそりゃ私と競えるほどのブスだけどキツイことはあんまり言ってこないの。
でも酔うと辛辣なことを毒針のようにさしてくる傾向があるの。
マキシワンピの私はちょっとだけ気になっていたことを恐る恐るヨンちゃんに聞いた。
「ねえ、ところで私さ、太ったと思う?正直に答えてよ」
この時の私はとにかくバレているのかバレていないのかが気になっていた。太ったのは知ってたけどそれが周囲にバレているのかだけが気になってた。
するとヨンちゃんは私の体をベロっと一瞥し、
「実はね・・・今日会った時から思ってたんだけど。」
やべー。これくる。告白くるー!ヨンちゃんの告白くるで!ヨンちゃん多分はっきり「お前太った」っていうで!
にじり汗が吹き出るデブ。
焦らすように見つめるドSでブスなヨン様。
「はよ言えやヨンちゃん。私太ったんだね?」
ヨンちゃんはゆっくりとした動作でおちょこから「いいちこ」をズルっと口に含み、悪戯な笑みを浮かべる。
「あんた今、ドッスンみたいだよ」
どひゃーーーーーーーーーーーーー!どっひゃーーーーーーーーーーー!
ドッスン!?ドッスン!?あの??あのマリオカートでたまに上からズドーーーンって邪魔してくる溶岩みたいなやつ!?
嘘だろ・・・項垂れた私にヨンちゃんが更なる一言。
「自分に甘えてるからこんなことになるんだよ」
ヨンちゃん!やめて!やめてよ!これ以上現実を突きつけないでっ!てかドッスンは予想を遥かに超えてたけど!
とにかく酔ったヨンちゃんに私は自分を見つめ直すきっかけを作って頂き、少しずつ少しずつダイエットすることを決意したわけ。
いろいろやったわよ。牛丼を椎茸丼に変えて、ゴールデンウィークなんて私断食してたんだから!死ぬかと思ったわ!
そりゃそうでしょ。デブってのはね、元の顔が結構可愛ければコロコロしてデブ専(神様)からモテたりするけど、私らブスは体型にだけは気をつけなきゃいけないの。
そんなこんなで、こんなサイトすっかり忘れてて入稿の催促がくるhotmailも開かずに断食してたせいで、怒涛の記事催促の最後には生きてますかって言われちゃったわけ。生きてるわよ!
とにかく、本当にごめんなさいね。
今は微ポチャに戻ってきたと思う。多分。
それにしても会社のカメレオンちゃんは酷いわよ。ブスは甘やかされていいことなんて何にもないわ。ブリブリ!
コラムニスト: わさ子。
80年台生まれ。中学生でレズビアンであることよりもブスであることの方が実は自分の人生においては重大な事ではないかと思い始める。
好きな芸能人は松田翔太、高畑淳子、樹木希林、モーニング娘。率いるハロプロ全般、中森明菜。
自身のバイブルは「嫌われ松子の一生」
その生態は謎めいており愛知県に生息しているとの噂。